演出作品

人宿町やどりぎ座『三人の盗賊』

2020.9 人宿町やどりぎ座

演出:黒澤世莉
劇作家:八木柊一郎

人宿町やどりぎ座2周年記念公演

作品概要

演出ノート

旅する演出家、黒澤世莉です。静岡での公演は、時間堂「ローザ」以来8年ぶりです。はじめまして、または、おひさしぶりです。「三人の盗賊」は不気味系コメディです。気楽に楽しんでください。

戯曲についてご紹介します。八木柊一郎のデビュー作で、1955年11月に文学座アトリエにて初演、三女レイ子を岸田今日子が演じていました。八木柊一郎は『波止場乞食と六人の息子たち』『コンベヤーは止まらない』で、宮本研『日本人民共和国』『メカニズム作戦』とともに1962年第8回岸田國士戯曲賞を受賞しています。面白い作家なので、もっと上演されればいいのになあ。

ここからはちょっとネタバレです。

この30年の日本には、あらゆるものを失った中間層が数多くいます。そして、狂気の姉妹はいなくても、家族の世話をするために人生を犠牲にしている、と認識している方はたくさんいらっしゃると思います。

「愛する人間の面倒を見る」という字面は美しいし、自分の人生を捧げることが生き甲斐だと思うひとは、そうすればいい。しかし、そう思えないひとは、無理にやらなくてもいい。すべて個人の自由です。

家族も財産も失ったレイ子が、手に入れた自由によって幸福になれるかどうか、それは分かりません。でも風船は自由に飛んでは行くだろう。いずれ割れてしまうことは決まった運命だけど、割れるまでに自由を経験できることは、やはり幸せなことだと私は思います。

そして、自由という言葉が、自分のためではなく他人のために使われるとき、自由という言葉は本当の価値を持つんだろうなあ、と思います。

黒澤世莉

出演者

大石宣広
蔭山ひさ枝
鈴木美嘉
おおいしあきよ(劇団静火)
吉見亮(SPAC)
白井風菜

劇場

人宿町やどりぎ座

日程

2020/09/03 (木) ~ 2020/09/13 (日)

黒澤世莉の振り返り

時間堂「ローザ」ではじめて地域ツアー公演に出たときに、はじめて受け入れてくれたのが静岡の「アトリエみるめ」、人宿町やどりぎ座の前身母体です。そこにお呼ばれして作品作りができたことは、とてもうれしいことでした。