演出作品

黒澤世莉チーム 利賀演劇人コンクール参加作品『桜の園』

2013.07/08 利賀芸術公演 岩舞台/巣鴨教会

演出:黒澤世莉
作:アントン・チェーホフ Anton Pavlovich CHEKHOV
訳:神西清 Kiyoshi JINZAI

作品概要

わたしのカンでは、日本は遠からず「桜の園」の世界になると思います。
上流階級のラネーフスカヤたちが没落したように、多くの人が貧しくなるでしょう。それは上流階級のはなしではなく、一億総中流と呼ばれたひとびとに起こるでしょう。
しかも、「桜の園」の登場人物たちが自分たち自ら首を絞めているように、一億総中流と呼ばれたひとびと自身が、まるで自殺するように没落への道へ突進していくのだと思います。

「桜の園」はフィクションですが、そのあとのロシアでは革命が起こり、今までとは違う豊かな暮らしが多くの人に提供されました。もちろん共産主義がすべてを解決したわけではなく、新しい時代が来た、それによって資本や技術や食料や住居が増え、いままで最低の生活をしていた人が人間らしく生活できるようになったということです。
いまの日本も一億総中流が瓦解したあと、新しい時代が来る可能性は大いにあると思います。それにむけて芸術家に出来ることは、来るべきうねりにたいして警鐘を鳴らし、十分な準備をさせ、させられなくても狼少年のように吠えて知らせておき、気づいた何人かの人の痛みを軽減させ、新しい時代を迎える準備を進めることです。
「桜の園」は、そういう作品にします。
(利賀演劇人コンクール2013提出書類より抜粋)

今の日本は経済的にも政治的にも破滅へ向かっているように見えるが、日本人はそのことに気づいていないか、気づいていても有効な手段を講じられない。
桜の園を日本に、ラネーフスカヤを多くの日本人に重ねあわせて、滅びゆく日本を現前化させる。
「関係性の演劇」を徹底させる。悲劇にも喜劇にもよせすぎない。他人の不幸はこっけいにみえる感覚を、観客と共有できる余裕を持った距離感で現前させる。

出演者

直江里美 Satomi NAOE
阿波屋鮎美 Ayumi AWAYA
長瀬みなみ Minami NAGASE

劇場

利賀芸術公演 岩舞台/巣鴨教会

日程

2013年7月・8月

黒澤世莉の振り返り

利賀の岩舞台にはものすごくたくさんの蛾がいました。大量発生の年だったんですねえ。