黒澤世莉のよく言うこと

カレーは正義

《登場人物》
黒澤世莉

旅する演出家

中谷弥生

聞くひと

松本一歩

聞くひと

中谷

世莉さん。

黒澤

はい。

中谷

たまにですね、「カレーは正義」っておっしゃってるのを聞くんですけれども。カレーは大好きなんですね、私。でも「カレーは正義」って思ったことはそんなにないかもなと思って。

なぜそんなに好きなのかを教えてもらってもいいですか。

黒澤

好きな人のことを説明するのってすごく難しいことですよね(照)。だって好きじゃないですか。すべてが好きでしょう、カレーは。

だって見た目も美しいし、香りもいいし、そしてもちろん味は言わずもがなだし、作っても楽しいですし、人と食べても素晴らしいし、これはもうすべてになってしまいますよ。

中谷

………。

黒澤

すべてが。素晴らしい。カレーは。

中谷

えっと、松本さんはどう思われますか。

松本

…そうですね。すべてですよ。カレーというのは、やっぱり……。

中谷

…。

カレーの何がそんなにいいわけ?

黒澤

一口にカレーといってもいっぱいあるじゃないですか。例えばボンカレーみたいなレトルトカレーもあるし、インドカレーもある。弥生さんはナンは好きですか?

中谷

ナン好きです!美味しいですよね。

黒澤

ですよね。もちもちしてるナンもいいし、サクサクしているナンもいいじゃないですか。

中谷

チーズが入ったのも好きです!

黒澤

ナンもあらゆるナンが好きだし。世の中にはすごくいろんなカレーがあって、「カレー」と一口に言っても給食に出るカレーもあるし、ご家庭でお母さんが作るカレーもあります。

カレーのルーってやっぱり素晴らしくって、日本のカレー・ルーって凄い文化だと思うんですよね。やっぱり誰でもおいしく作れるし、失敗せずに美味しいものができることってすごいと思うんですよ。

市販のそういういわゆるカレー・ルーみたいなものもあるけれども、弥生さんカレー・フレークって分かりますか?

中谷

はじめて聞きました…!

黒澤

スーパーとかに行ったときに見てみて欲しいんですけど、横浜舶来亭とかが有名なのかな?カレーのルーがフレークになってるものがあるんです。カレーのふりかけというか、サラサラした細かく砕かれたものが入っていて、それでカレーを作るとすごく使いやすくて美味しかったりする。

あとは市販のスパイスセットみたいなものもあるし、好きが高じると、自分でひとつひとつのスパイスを買い集めたりするようになっていきます。

そういう風にいろんな楽しみ方もある。そして、カレーは国境も越えるじゃないですか。

元々カレーはインド発祥の料理ではありますけど、インドのお隣のスリランカ、パキスタン、バングラデシュ、ネパールにもそういうカレー料理的なるものはあるんですよね。

あとはタイのカレー、グリーンカレーとかレッドカレーもおいしいし。タイのマッサマンカレーが世界で一番美味しいカレーと言われたりもしますよね。

中谷

あ、知らないです。マッサマンカレーですか?

黒澤

そうそう。マッサマンカレーというカレーがあります。

中谷

何ですかそれは?

黒澤

ちょっと甘口で、ココナッツミルクが入っていて甘めのカレーで。松本さん、あれは誰が世界一って言ってるんですかね?

松本

誰なんでしょうね、でも世界的に一番美味しいカレーと言われていますね。

黒澤

世界一美味しいって言われるんだけど、どういう根拠かはわからない…。

でも元々カレーという名前ができたのはイギリスじゃないですか。

中谷

そうなんですか?

黒澤

そうそう。だってほら、カレーパウダーみたいなものは、イギリスがインドを植民地にして色々ぶいぶい言わせていた時に、インドの文化を輸入してスパイスの入った煮込み料理みたいなものを作ったのを「カレー」と称したのが始まりなんだよね。

中谷

知らなかったです。

インドに「カレー」がないってどゆこと?

黒澤

インドには元々「カレー」という料理はなかったんですよ。

中谷

(植民地だったという)インドの歴史は知っていたつもりだったんですけど、イギリスがカレーの発祥地だったんですか。カレーという言葉の語源も、イギリスであると。

黒澤

いわゆるカレーと称されるような食べ物は、インドにはないんですよね。逆に言うと、全てがカレー的な食べ物となっているんです。

例えばチキンマサラというチキンをスパイスで炒めたもの、というカレー的な食べ物はいっぱいあるけど、ある一つの料理を指して「カレー」という食べ物はないとでもいいましょうか。

今はもちろんインドに行ってもカレーって書いてありますよ。でも元々カレーという言葉はインドにはなかったみたいです。

中谷

そうなんですね!バターチキンカレーとか、ダルカレーとか、日本のインド料理屋さんだとそのようにメニューに書いてありますけれども、インドでは必ずしもそうではないんですね。

黒澤

「カレー」という言葉自体は、近年イギリスからインドへ逆輸入されて以降はさておき、インドには元々なかった言葉だということですね。元はイギリスで生まれていたはず。後でちゃんと調べますね

ここで言いたいこととしては、世界中にカレーという料理はある、と。それはイギリスから世界に広まったものだということですね。そして日本のカレーというのもやはりイギリスから入ってきたものなわけですね。

S&Bの赤缶ってあるじゃないですか。

中谷

うちにもあります!

黒澤

あれ美味しいよね。ちょっと炒め物に入れるとカレーらしくなるし。この前しらすをカレー味に味付けしている料理が美味しかったりしたんですけれども。

カレーってすごくて。カレーと一口に言ってもすごく多様な種類があるし、カレーと言われて想像することも人によって違うじゃないですか。

お蕎麦屋さんのカレーが好きな人もいればインドカレーが好きな人もいる。一歩さんみたいにエクストリームな方へいっちゃってる人はホールスパイスがゴリゴリ入ってるエッジが効いたやつが好きで…みたいなことになったりすると。

でもカレーを嫌いっていう人はあんまりいないと思うんですよ、辛いものが苦手という人はいるかもしれないけれども、カレーそのものが嫌いという人はなかなかいないと思うんです。

あらゆるカレーはおいしい。私が言いたいのはそういうことです。

本当に多様な種類があって、色んなカレーがあるけれども、どれも美味しい。「みんなちがって、みんないい」という、な金子みすゞみたいなことになりますよね。

それがカレーの魅力じゃないですかね。

松本

カレー粉はイギリス生まれということがこちらの本(主婦の友社『スパイス&ハーブの使いこなし事典』2020年 p.95)にも書いてありますね。

「数千年の歴史を誇るインドのカレー料理は、家庭で常備している何十種類のスパイス&ハーブの中からその日の素材や家族の好みに合わせて5〜10種類を組み合わせて作られる。しかし『カレー』と称する料理はなく、素材やスパイスの組み合わせの違い、調理法の違いなどでそれぞれ固有の料理名が付けられている。これら何百種類もの辛くてスパイシーな料理を、欧米や日本では総称してカレーと呼んでいるのである。」

「18世紀後半、インドに赴任していた東インド会社の社員が、イギリスにカレー料理を持ち帰り、西洋の食文化と融合して小麦粉でとろみをつけるという手法が用いられるようになった。さらにあらかじめ複数のスパイスが調合された『カレー粉』を用いるという独自のスタイルが生み出された。」

中谷

なるほど。インドだといろんなスパイスがあって、それをお料理の度にそれぞれ調合して作るから「これ一本でOK!」みたいな粉があるわけではないということですね。

黒澤

日本でも売ってるけど、ガラムマサラってあるじゃないですか。いろんなスパイスが混ざっていて、入れると味が整うみたいな。

そういういろいろ調合された粉というものがあるにはあるけれども、実は一般の家庭だとそれぞれのスパイスが瓶に入ったものがバーッと並んでいて、料理に応じてそのスパイスをひとつひとつ調合していく。

「お魚だったらマスタードシードを入れよう」とか、例えば「香りをつけたいからクミンを入れよう」ということを各自で調節していくんですよね。

日本人でもだしを取るときにそういう作業をするじゃないですか。「今日のお味噌汁はかつおだし!」だとか、あるいは「お鍋であごだしと昆布を使いたいから、前の日から昆布を水に浸けておいて出汁を取ろう」とか。

日本でいうそうした感覚に、おそらくスパイスの調合っていうのは近いんじゃないだろうかと思います。

中谷

インドでは素材に応じてスパイスの調合を工夫して、それぞれ唯一無二の味を出すということですね。

黒澤

昔オーストラリアに住んでいた時にスリランカ出身の人とお家をシェアしていたんですね。その時にご飯とかも割とお互いに作った物を勝手に食べていいよ、みたいな感じだったんです。

ある時キッチンにホワイトソースのラビオリみたいな食べ物が置いてあったので、それを食べてみようと思って食べたらとても辛くって。「白いのに何で辛いんだよ!」っていう(笑)。

おそらくスパイスが入っていたんですね。その当時からカレーが好きだったものですから「ぜひこの料理のスパイスの使い方を教えてほしい」ってその子に言ったんです。そしたら彼がなんて答えたと思いますか。

中谷

「秘伝だから教えられないぜ!」

黒澤

それがまったく逆だったんです。「適当」って言われて(笑)。

まあ言われてみると確かに日本人でも肉じゃがをつくる時にそんなにいちいちみりんと醤油を測ったりしないよなーと思って。「味が決まったらいいや」っていう感じですよね。「砂糖入れすぎたけどまあいいや…」みたいな。

おそらく彼もそんな感じだったんだろうなということを、今となっては思います。

被害者、松本一歩の場合

中谷

ちなみに一歩くんもカレーだいぶ好きらしくて、今世莉さんもおっしゃってましたけどスパイスをゴリゴリ使ったような本格カレーが特にお好みということなんですけれども、世莉さんの影響でカレーが好きになったんですか?

松本

そうですね、世莉さんから直接そういうカレーやスパイスについて指南を受けた訳ではないんですけれども。

演劇の道を志した時には先達として世莉さんがその演劇の道の先にはいらっしゃいましたし、カレーにちょっとずつ心が向き始めたのも、やはりそういう世莉さんだったり、世莉さんの演出助手をしていた越くん(寛生(劇)ヤリナゲ)がやたらカレーのことを好きなのが印象的だったからでした。

いろんな先輩達が、何でか知らないけれども皆さんカレーが好きなので、演劇をやってる方々は概ね…。

中谷

概ね…(笑)。

松本

あとは地の利に恵まれたというのはあるかもしれないですね。

例えばカレーが好きな方の中でも名店と言われる「エチオピア」であったりとか、少し前までは「ダルシムカリー」という強烈な個性のあるお店であったりとか、最近ですと「四次元食堂」という良質なカレーのお店たちがたまたま近所に揃っていました。

そうしたお店へ何度か足を運んでいるうちに、気が付いたら沼にいたなという気持ちはあります。

中谷

…「カレー沼」なんですね。

黒澤

沼なんですよ。たしかにいいカレー屋さんがいっぱいあるんですよね、そのあたりには。

中谷

まさか世莉さんが発端じゃないだろうと思って聞いたんですけれど、本当に世莉さんからの影響でカレーを好きになったんだね。

松本

(うなずく。)

黒澤

でも僕はそんなに押し付けがましいカレー布教者じゃないと思っています。

僕はとてもカレーが好きだけれど、あんまり「食べろ食べろ!」って他の人に押し付けたりはしていないと思うんですよね。

中谷

まあそれはそうですよね。

黒澤

むしろ周りの人達が勝手に「世莉さんご飯食べに行きましょうよ、カレーでいいですか?」って聞いてくる、みたいな(笑)。

俺、普通にカレー以外のものも食べるのに、なんで俺だとそんなにカレー限定になるんだろうか…。「世莉さんを見るとカレーが食べたくなるんです!」みたいな事を皆さんおっしゃるんですけど。

もちろん僕は自分でもカレーを食べますし、知らないお店に行ってメニューにカレーがあったならば「とりあえずカレーを頼まなければ」みたいな、自分でもちょっと義務感になってきている部分があるんですけれども…。

美味しいカレーがあったら、それはやはりSNSでシェアしなければならない。もちろんそういうこともしますけれども、別に一歩さんとか自分以外の人に強制的にカレーを食べさせているわけではなくて。

なんでだかみんなが僕を見たらカレーを食べたくなるという風になっている。これはみんなの中にカレーが芽生えているんだと、僕は思っているんですけどね。

それってすごいよね。カレーそのものが持っている魅力なんだと思うんです。

で、わたしとカレーとどっちが大事なのよ!

中谷

あのー、これはすごい、野暮な質問かもしれないんですが、演劇とカレーはどっちが好きですか?「私と仕事どっちが大事なの?」みたいな質問になっちゃったけど…。

黒澤

…それは難しい。難しい、問いかけをしますね…。

中谷

比べるものじゃないですよね。

黒澤

前に「そんなに強く演劇を握りしめなくてもいい」という話をしたと思うんですけど、カレーについてもやはり僕自身カレーにすごくこだわって食べているというわけではないと思っていて。言うなれば「カレーをそんなに強く握りしめなくてもいい」ですね。

演劇もカレーも好きだから食べるんですよね。好きだから演劇をやるし、好きだからカレーを食べる。

でもそれが逆に義務感になってしまうということはあると思うんですよね。ちょっとこだわり過ぎてしまって「自分にはこれしかない」って思ってしまうような事ってあると思うんです。

でもなるべく僕はそういう付き合い方はしたくないと思っていて。それはカレーに対しても演劇に対しても不誠実なことだと思うから。

だからちゃんと美味しいと思う時にカレーを食べたいし、今カレーが食べたくないっていう時には別にお刺身を食べてもいいですし。

でも、あらゆる料理にはカレーの要素が入っているな、と思うことがあるんです。

中谷

どういうことですか?

黒澤

例えば麻婆豆腐ってカレーだと思っているんですよ。麻婆茄子とか。あれはチャイニーズカレーだと思うんですね。

中谷

甜麺醤(てんめんじゃん)と、豆板醤…。

黒澤

そして山椒(さんしょう)ですね。山椒ってすごいスパイスですから。

中谷

山椒、それに花椒(かしょう、ホアジャン)ですね!

黒澤

だから、カレーか演劇かどっちかを選べと言われるとすごく困るけど。あまりそこにこだわりたくないなとは思っています。カレーも演劇もあんまり強く握りしめたくないなという風にも思っています。

あらゆる料理、スパイスが入っているものは特にですが、あらゆる料理にカレーを感じているという部分はあって。

「このカレーが特に好き」というよりは、スパイスが入っている食べ物はすごく美味しいなと思っているし、そう思うとスパイスっていうものが正義なのかもしれないですね。

中谷

なるほど、うんうん。

スパイスは正義ってこと?

松本

スパイスはやっぱり懐(ふところ)がものすごく深いですし、植物由来のエネルギーがありますよね。いわば肉や魚といったいわゆる動物性たんぱく質よりも射程が長い存在なんだと思うんです。

僕が思うにそこにはやはりボタニカルな(植物的な)時間観というのがあって。肉はすぐ腐ってしまいますし、昔だったら冷蔵庫もありませんから時間が経つとすぐに傷んでしまったり、腐敗してしまったり獣臭くてとても食べられなくなってしまう。

でも、スパイスをパッと振ってあげることでその臭みが飛んで旨味と転じて、そうしたお肉やお魚を食べて体内に取り込めるようになることで人がより良く食生活を送れるようにしてくれるんですよね。

スパイスって元々いろんな植物の種子だったり根っこだったりしますが、そうして肉という傷みやすく移ろいやすいものの賞味期限を伸ばして味わいをより良くしてくれる存在なわけですよね。

なのでやっぱりカレーというものを根底で支えているのはスパイスなのだと思います。

根っこや種子というのはその植物にとって未来を支える礎です。そういう植物のエネルギーが土台となって支えてくれているからこそ、カレー文化というのが今でもなおいろんな人の心の中で栄え、根付いているという部分はあるかもしれませんね。

黒澤

そうだよね。スパイスって元々薬みたいなところもあるからね。漢方薬だったりもするし。

イギリスが胡椒でめちゃくちゃ儲かったけど、あれはやっぱりお肉とかを腐らせないという効果がものすごく強かったからこそ、そうした大きな価値が生まれたっていう側面もありますし。

「必ずこの3種類のスパイスが入ればカレーになる」というスパイスがありまして、皆さんご存知だと思うんですけどターメリックとクミンとコリアンダーなんですよね。この三つを適当に入れておけば美味しいカレーになるんですけど、ターメリックって漢方でいう所の何だかご存知ですか?

中谷

ターメリックはウコン、肝臓にとても良いものですね。

黒澤

ウコンというと二日酔いの人が飲むドリンクになったりもしていますし、体にとても良いものだったりします。

別に体にいいから食べていたわけではないんですけれども、結果としてカレーってめちゃめちゃ体にいいというか、なんなら漢方薬を薬膳として摂取しているということにもなりますよね。

中谷

確かにそう思うとクミンやコリアンダーにも抗酸化作用があったりしますよね。今、世界的にもおうちで料理しようという流れがある中で、一食一食を見直すというムーブメントがあると思うんです。

一つ一つの食材に対して、例えばスパイスであればこういう効能があって、一つ一つの食材にはこういういいところがあって、という情報を目にすることも多いと思うんですね。

もちろん新しく作られたものの中でもおいしいものってたくさんあると思うし、油と糖はおいしいっていうのもすごくよく分かるんです。

でも、カレーを食べた時に私は一番ホッとすると思うんです。それは日本のカレーのルーでもそうですし、インド風の南インドやスリランカといったスパイスカレーでもやはりほっとするんです。

それは本当に体にいいものを取り込んでいるなと思うからホッとする気持ちが生まれるのかなって、今お話を伺っていて思いました。おいしいものは体にいいみたいな。

ふーん、で、どこが美味しいのか教えなさいよ

黒澤

最後にみんなにおすすめのカレーをちゃんと伝えた方がいいかなと思って。もしもこの記事を読んで興味が湧いたら、こういうお店を見てくださいという紹介をしたいと思います。

まずインドの話をするんですけど、インドでカレーを食べるとなったらどこでも美味しいんです。近年ではデリーでも結構南インドカレーというものが食べられるようになっていて、僕はそれをオススメします。

もしもめちゃめちゃお金があるようだったら、デリーにある「Indian accent」っていうお店に行ってみて欲しいです。

めちゃくちゃ洗練されていて高級インド料理屋さんなのだけど、ここは本当にひっくり返るくらい美味しいので是非行って欲しいなと思います。ちょっと高いんですけどね…。

中谷

ちょっと高いっていうのはどれくらい高いんですか?

黒澤

他のインドカレーが100円とか200円で食べられるんだけど、「Indian accent」は5000〜6000円から1万円くらいします。

中谷

だいぶ格が高い、星がいっぱい付いている感じなんですね!

黒澤

でもその「Indian accent」はすっごく美味しいし、おしゃれだし、おすすめです。

これはインドの話でしたけど、次は日本ですね。ざっくりと東と西に分けて考えたいと思います。

もちろん北海道にもスープカレーという素晴らしい文化がありますし、九州は九州で焼きカレーっていう文化が福岡にあったりします。いろんなカレーがいろんな日本各地にあるんですが、一旦東京大阪近辺ってことで話をまとめたいと思いますね。

僕が東京では一番好きなのが、新宿御苑にある「草枕」というカレー屋さんです。ちょっとサラサラなチキンカレーなんですがとてもおいしくって、おすすめです。

大阪だと「旧ヤム邸」っていう、谷町六丁目の空堀商店街にあるお店がおすすめです。古民家で営業されています。

大阪が日本のスパイスカレー発祥の地であるという話は今回ちょっと省くんですが、ものすごく美味しいスパイスカレーのお店があるのでぜひ食べてほしいと思います。

あとは最近ですね、2021年に入ってから私が開拓したお店を二つ紹介したいと思います。これから紹介するお店はいずれもスパイスカレーのお店ですね。スパイスカレーというのはざっくりいうといくつかの種類のさらさらなカレーと、いくつかの副菜が乗るというスタイルのカレーのことです。

(と、画面共有を始める。)

一つが立川の「chichica」というカレー屋さんです。小さいお店です。
塩豚カレーというのがオススメなんですが、すごくあっさりしていて美味しいんですよね。

優しい味なんだけど、すごくスパイスが効いています。置かれているすべてのカレーの味が違って、どれもとてもおいしいというカレーです。

中谷

カレーって茶色と白のイメージだったんですが、こちらのchichicaというお店はですね、一皿一皿がとてもカラフルです。

野菜の緑もあれば薄紫もあり、黄色も並んでいて、これまで想像していたのとは違うカレーの写真が並んでいます。

黒澤

スパイスカレーのchichicaはぜひ食べてみてほしいなと思います。

「立川だと行けないよ」という人もいるかと思いますので、もう一店ご紹介したいのが渋谷の「カレーショップ初恋」というお店です。

渋谷マークシティをさらに上がった所のビルに入っているお店なんですが、ここもスパイスカレーがとても美味しいお店です。

スパイスカレーのルーと副菜が一皿に乗って供されるスタイルのお店なんですが、ここのお店はですね、僕はまだ食べられていないんですが、実はビリヤニが凄く推されているお店です。

中谷

ビリヤニというのは何でしたっけ?

黒澤

カレーの炊き込みご飯というか、パエリアのカレー版みたいな感じですね。

こちらのお店の「クラフトビリヤニ」というのがめちゃめちゃ推されているんですね。

(と、画像を拡大する)

中谷

すごい、なんだか見た目として色なんかはチャーハンに近いですね。お米が山盛りになっている上に副菜やお野菜がどんどこ乗っているスタイルの食べ物ですね。

黒澤

最近東京でもビリヤニを食べられるお店が増えたんですけれども、ビリヤニというのは結構量が多くって。一人では食べきれないので、食べきれない分はお弁当にして持ち帰る、というスタイルが多いんですね。

僕自身ちょっと食が細いので、ビリヤニもお店ではなかなか一人で食べきれないんですけれども。

こちらの「カレーショップ初恋」は結構パンチが効いている感じのお店ですね。味のエッジがかなり効いていて、でもすごくまとまりがあって美味しいというお店です。

中谷

こちらの「カレーショップ初恋」の方はですね、お皿もあざやかな青い器を使っていたりして見た目にも洗練されていて美しいですね。「chichica」も素朴で美しい盛り付けで、どちらもとてもおいしそうですね!

黒澤

パンチ力が欲しい方は渋谷の「カレーショップ初恋」がおすすめかもしれません。
どちらのお店も私が今年見つけて、是非皆さんにお勧めをしたいと思ったお店です。

今年はたぶん、これからビリヤニが流行るので、興味がある人はビリヤニの情報を追っていくとちょっと面白いお店が出るんじゃないかなと思います。

中谷

ありがとうございます!ビリヤニという単語は聞いたことがあったけど、なんだかよくわからないなと思っていたので今日伺えて良かったです。

黒澤

まあ色々しゃべりましたけれども、「カレーは正義」というのも僕が本当にカレーを好きだというだけなので、人に押し付けようとはまったく思っていないんです。それは演劇もそうなんですけれども。

ただやっぱり1回ハマるとカレーは本当に深いので、ぜひ皆で美味しいカレーを食べてね、という気持ちです。

そして気に入ったカレー屋さんはぜひたくさん通って、そのお店が長く続くようにみんなで応援しましょう!

中谷

「カレーをそんなに強く握りしめなくてもいい」というフレーズがありましたけれども、世莉さんの演劇観にも通ずるものがありますよね。

カレーも演劇も「大好きなものは、そうやって握り締めすぎないぐらいの方がより幸せだよ」という価値観が共通しているのかなと思いました。

黒澤

そうですね。だから「カレーか演劇かどっちか選べ」みたいな話はやめましょう(笑)。

中谷

そうですね、ごめんなさい(笑)。ありがとうございました!

黒澤

カレーを食べましょう!

黒澤世莉(くろさわせり)

旅する演出家。2016年までの時間堂主宰。スタニスラフスキーとサンフォードマイズナーを学び、演出家、脚本家、ファシリテーターとして日本全国で活動。公共劇場や国際プロジェクトとの共同制作など外部演出・台本提供も多数あり。「俳優の魅力を活かすシンプルかつ奥深い演劇」を標榜し、俳優と観客の間に生まれ、瞬間瞬間移ろうものを濃密に描き出す。俳優指導者としても新国立劇場演劇研修所、円演劇研究所、ENBUゼミ、芸能事務所などで活動。

黒澤世莉

中谷弥生(なかたにやよい)

栄養にうるさい健康志向俳優。小学生からお爺さん役まで幅広いキャラクターを演じる。音楽劇、ミュージカル、ストレートプレイで活動。黒澤演出作品は『森の別の場所』『ゾーヤペーリツのアパート』などに出演。近年は経験を活かしコミュニケーションWS講師、歌唱指導も行う。やよラボ主宰。

中谷弥生

松本一歩(まつもとかずほ)

たたかう広背筋。時間堂最晩年の『ゾーヤ・ペーリツのアパート』(2016年)で制作助手、解散公演『ローザ』(2016年)にて時間堂劇団員ロングインタビューを務める。俳優、演出、劇団主宰(平泳ぎ本店/HiraoyogiCo.)。

松本一歩